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芸術

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  • コラムサムネ

    陶芸

    2017.10.30



    松戸市で大人気の教室、『藤心陶芸センター』を経営する小坂尚子さん。
    陶芸がプロの世界だけのものだった時代から教室を始め、現在のように趣味レベルまで普及させた陶芸教育の第一人者です。
    彼女はどんなに忙しくても生徒一人一人に向き合い、教育に情熱をかたむけてきました。
    世代を超えて誰かに何かを伝えていくという姿勢はエイジレスにも通じるものがあります。小坂さんの考える教育についてお話をうかがいました。


    「人に頼まれて」始まった教室


    ↑現在の藤心陶芸教室。大量の材料と装置が並ぶ。
    独学であらゆる技法を学び、時には寝る間も惜しんで授業の準備をしたという小坂さんですが、彼女が陶芸を始めたのは意外にも「人から頼まれたから」でした。

    もともと美術好きの家庭で育った小坂さんは、大学で彫刻を学び、美術教師の教員免許を取得しました。
    卒業後は一般企業に就職、結婚を機に退職し、趣味で彫刻と油絵を続けながら子育てに専念していたそうです。

    「当時は陶芸なんて全然知らなかったし、興味もなかった」そうですが、松戸市の学童保育職員になったことがきっかけで陶芸と出会ったといいます。
    学童保育で子供達と創作活動をする時、材料を購入した会社の社員に陶芸教室を開くよう熱心に頼まれたのです。

    しかし、現在とは違ってプロによる陶芸しかなかった時代、当然教室もほとんどありませんでした。
    小坂さんはほぼ独学で技術を学び、教室の準備を始めました。
    一ヶ月間ほとんど寝る間もなく、毎日あらゆる技術を試したといいます。

    苦心の甲斐あって、大学で学んだ造形の技術も活かし市内の美術教諭に指導を始めたところ、市内の小中学校で1000人以上を相手に授業をするほどになりました。
    当時は県や市に陶芸を教える技師がいなかったため、ほとんど一人で市内中の小学校をまわったのだそう。
    さらにその後は県の技師の育成にも携わっています。

    小坂さんの活動に伴って陶芸人口は増え、現在のようにたくさんの人が趣味として陶芸を学ぶようになったのです。
    「頼まれて」始まった教室で、趣味として「陶芸」というジャンルを確立させるまで努力することはなかなかできることではありません。

    その熱意の原動力はいったいどこにあったのでしょうか。


    「趣味の教室とはいえ、本物を見せたい」教育にかける気持ち



    ↑焼く前の器と窯。他にもたくさんの種類の窯がある

    全く陶芸に興味がなかったのに、どうしてストイックに努力し続けることができたのか、「好きだからできる、じゃないの。あることを本当に好きだったら私みたいに他人のことをかまったりしないのよ。」と小坂さんは話します。

    「もともと趣味じゃなかったから100パーセント生徒さんのために時間を割ける。自分がものを作る時間は一切なくなりました。でも、だからこそ続けてこられたんです。作家活動なんてしていたら無理でしたね。
    自身が陶芸に興味がなかったからこそできた、と微笑みながら話す姿にはどこか飄々とした印象を受けました。

    しかし、一方で、本物の技術をきちんと伝える意識は誰にも負けないともいいます。
    藤心陶芸教室は、プロの作家の作品や、陶芸の本場を見るために韓国や台湾へ毎年旅行に行っています。

    作品も全ての窯を見せられるようあらゆる窯を用意しているとのこと。
    また、初心者から始めても、最終的には独立し教室を開けるようになるほどしっかり技術を教えています。
    常に新しいものを取り入れて発展していけるように、自分だけで知識を抱え込むのではなく知っていることを全て生徒に伝えているのだそうです。

    趣味の教室とはいえ、ちゃんと本物を。趣味だからってお茶碗作ってればいいんじゃなくて、せっかく教室に来たんだから、ただいるだけでも知識が入るように、そういう気持ちでやってる。だから長続きしたのかもしれないわね。」
    そう語る姿からは、長年教室を守り、陶芸教育に注力してきたことへのプライドと情熱を感じました。

    教育への情熱とその原点



    ↑一人ひとり、丁寧に教える。
    どうしてそこまでできるのか、再びそう尋ねると「育てるのが好きだから」という答えが返ってきました。
    大学在学時、教員免許の取得のため千葉のろう学校で一ヶ月ほど学んだという小坂さん。
    そこでの教育に衝撃を受けたことが教育を考える原点になっているのだそうです。

    耳が聞こえないため話すことができず、「あ」という音がわからない子供たち。
    その一人ひとりに寄り添って、決して諦めることなく「あ」を教え続ける教員に感銘を受けたのだそう。
    徹底的に生徒に向き合い、教える姿に「教育はすごい。本当の教育とはこういうものだ。」と思ったといいます。

    今、小坂さんは「教育って欲得とかそういうことじゃなくて、来たら教えてあげる、わからないことを教えてあげる、身を粉にしてやってあげることだと思うの」と話します。
    現在まで続く、教育にかける思いの根底にあったのは、個人をよく見ながら徹底的に相手にあった教え方をしていこうとする情熱でした。

    小坂さんは今年で
    75歳になりますが、現在でも初心者から長く教室を続けている人まで、あらゆる人に合わせた指導を行っています。
    決して窯の火を絶やすことなく、自由に学びを追求できる場所を守り続ける姿、そこには決して変わらない信念を感じました。

    自分の持っているものを次世代につないでいく


    ↑はじめてろくろを触る体験者に扱い方を教える。
    藤心陶芸教室には小坂さんを慕って、現在もたくさんの生徒が通っています。
    教室を開いた時から通い続けている人もいて、今や教室は皆さんにとって大切な生きがい、居場所となっているそうです。

    人に頼まれて始まった教室は今や陶芸をここまで普及させ、たくさんの人の生きがいを作り出しました。
    これは、親身になって教えるというブレない姿勢が一人一人に伝わったからこそ成し遂げられたことでしょう。
    また、「教えてあげている」という意識を全く持たず、「(生徒たちは)立派な経歴を持っていても、自分の方が年上でも決して嫌な態度をとらない。私はむしろ生徒さんたちから学んでいるんですよ。」と
    す小坂さんの謙虚な人柄によるものだとも言えます。

    自分のためよりも人のために、という考え方はわかっていてもなかなかできるものではありません。それだけに小坂さんは貴重な存在なのだと思います。
    ですが、目の前の人に等身大で向き合い、伝えていく意識を持つことは今もっとも必要なことの一つなのではないでしょうか。

    私たちは歳を重ねる中でたくさんの知識、技術を獲得していきます。
    それを活かし、誰かに伝えていくことで社会はよりよくなっていきます。
    誰かとつながることを恐れず、世代間の架け橋となるような存在、それがエイジレスであり、今社会で求められている人材であると言えるでしょう。


    小坂尚子さんプロフィール
    1942年生まれ。戸板女子短期大学[美術科]卒。教員課程卒業。東葛陶芸センター、美術陶芸センターを開設した後、1993年に藤心陶芸センターを設立、主宰。トルコ招待作家作陶展、トルコ マルマラ大学陶芸科共同プロジェクト、同大主催第5回国際陶芸シンポジュームなどに参加。フランス・パリで開催された「パリ現代ジャポニズム芸術祭」にて出品、陶芸部門に招待参加し芸術褒賞受賞。その他千葉県美術展覧会入選、陶芸財団展入賞、彩陶展入賞、日象展入賞、新槐樹社展入賞など多数受賞。

  • コラムサムネ

    芸術

    2017.09.22

    現在、3つの陶芸教室を運営している。それぞれ違ったコンセプトの教室にしています。その中で、シニア世代の方に対しどんなことを教え、どんなことを教えられるか。陶芸に来られる生徒さんの年齢は様々です。若い方もいればご年配の方もいらっしゃいます。そういった違った年代の方同士が、陶芸を通して出会うことで刺激になり、新しい発見ややりがいなどが見つかると私は思います。
    そんな陶芸教室の魅力をよりたくさんの方に伝えたいと思い、今回はシニアの方が新しく感じる生きがいなどについてお話しをしたいと思います。





    陶芸教室は、夢中になる人とならない人に分かれます。それは、学生時代に音楽と美術の選択でどちらを選択したかによって決まっているといっても過言ではありません。
    ですので、陶芸は得意だけどカラオケが苦手だという人が結構います。

    生徒さんにはシニアの方も多いです。
    シニアの方は、定年後に陶芸を趣味で始めてやりがいになっていく方が多いです。
    手先を使いますし、頭も使うでしょう。認知症などの予防にもなって若さを保つことができるのだと思います。
    それだけではありません。定年後に通い、その後陶芸を別の生徒さんに教えるようになっていきます。そうなると、その教える喜びなどを感じてより没頭していくようになります。
    陶芸を教えることが生きがいになって、ご自身で開業した方までいらっしゃるぐらいです。教えられているシニアの方は、本当に活き活きとされております。自分にも陶芸を教えられるということで、人のためになることができるのが生きがいになっているのです。

    なぜ、そのように喜びを感じるか。私の考えでは、シニアは能力があり、時間があり、お金がある。そして、何か役に立ち、自分が生きている実感を持ちたいと思っているからである。
    今までローンや養育費など、お金の為に働かざるを得なかった。つまり、何をやりたいかではなく、とりあえず条件の良い所で会社を選んできた人は多くいるでしょう。だからこそ、定年を迎えたシニアの方は、本当に何をしたいかで選ぶことが出来ます。
    “好きなことをやって、それが仕事になる”という考え方を実現できるのがシニア世代の方たちだ。
    そういったところから、陶芸を始め夢中になり、誰かに教えることに喜びを感じ、開業する人もいるのです。

    大崎透さんという方は、ここで陶芸を始めたことをきっかけにすっかりそっちにはまってしまい、プロになられました。
    藤原さんという方は、分析化学をやっていた方で、自分のつながりを使って珍しい砂やカルシウムなどを陶器に入れて自分なりの作品を作ったりもしていました。

    単純にできることを活かすのではなく、縛られずやっている側も好きなことをできるというのが重要。

    “切り替え”

    今までのものを捨ててとは言わないが、いろいろなしがらみがあってやっていたことを切り替えてまたスタートするということが大事なのではないか。
    人と比べるのではなく、独自のものを作る。
    そういったしがらみから離れているのもシニアの特徴だと私は思います。

    シニアの良さは自分の好きなことが出来る。無理をしてやっているわけじゃないから、その人たちと接する私たちも元気をもらえる。
    今後も、そういったシニアの方たちが増え続けられるような陶芸教室にしていきたいと改めて思います。

  • コラムサムネ

    芸術

    2017.09.22

    2015年に『フリーアート』という本を出版していただきました。この本は私が自分の絵を描く上で、一番大事なことは何か、何をもとに絵を描くかを考えてみようと思い、いろいろ書いてみました。

     私のアトリエは40年も前から続けております。昔は、仕事の帰りに夕食をすませて、こちらのアトリエに来られて、ゆっくり絵を描いて帰る人が多かったと思います。最近そんな方は少なくなって、仕事が終わってすぐ来られるとか、それもかなり遅くなってしまい、絵があまり描けず、とうとうやめてしまうという人が出てきています。自分の時間がつくれない、生活が仕事だけに追われ、時間にのんびりしたものがなくなり、ゆったりとした気持ちが持てない、緊張状態が日常を通して継続している人が増えています。
     こういう状態に耐えられる人は何とかそれに耐えています。耐えられるだけ耐える、いっぱい、いっぱいの生活に追われている。こういう状態が長年続きます。そして、この緊迫状況から突然解放されたとき、この人はどうなるでしょう。

     定年で仕事をやめた人が私のアトリエにきていますが、仕事の緊迫状況から解放されても、長年これに縛られてきた人は、どうしてもこの緊迫状況から脱却できず、お金も、時間もタップリあるにもかかわらず、鬱々した心情が継続していて、アトリエに来るには来るが、定期的には来られず、時々に来る。絵もあまり熱がはいりません。さえない気持ちを払拭できず、日々よどんだ生活を送っているようです。

     このような生活から脱却か、あるいはこのような生活の予防に参考になるのは、原始時代の人たちの生活です。あるいはアマゾンの森の奥深いところで生活しているひとたちです。たしかに水洗トイレはないし、冷蔵庫もありません。木と木の間にハンモックをつるして、それに乗ってゆらゆらしています。仕事は食べ物を探すこと。一日分の食べ物をさがして獲りにいき、獲れたら帰ってくる。それだけすれば、あとは仲間同士で何か面白いことを見つけて歌ったり踊ったりで日を送る、こんなことでしょう。人間は動物なので、動物として何が良いのか考えてみることが、現代の人たちには必要になっています。

     日本では、江戸時代までは、まだまだのんびりした生活をしていましたが、明治以降、西洋文明をとりいれてから、それも特に第二次大戦以降、アメリカの生活様式がどんどん入ってきて、人間がキカイのように扱われることが多くなっています。日本の人たちはたいした抵抗もなく、これを受け入れて、合理的社会に順応してきましたが、そろそろ限界がみえてきているようです。

     

     私は現代絵画を描いています。これは西洋の様式で作られたもので、西洋の様式の中で絵を描くことになります。西洋の絵画はやはり、なんといっても合理的なものの見方が基本となっているので、どうしても、これに従わないわけにいきません。私はここに突破口を見つけようと思っているとき、「へなへな、ふにゃふにゃ」という言葉と考えがふっと浮かんできました。これを私の本『フリーアート』の基本テーマにしました。禅宗では公案というのがあって、師が弟子に問題をだします。これには、とんでもない、わけのわからない答えが返ってきます。私もこれにならって、「現代絵画は何ぞや」という問いに対して「へなへな、ふにゃふにゃ」をその答えとしました。

     この本ではつぎのような人たちまたは事柄がでてきます。
    ヘンリー・ミラー、ニーチェ、臨済録、ビートタケシ、ジョン・ケージ、本庄の寒山
    埼玉の少林寺の五百羅漢、アールブリュットの画家 石川光寛の絵 等





                            


                            菅沼アトリエ   菅沼 荘二郎

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